ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

自分で自分を売り込むくらいの気概を

丸岡啓二

有機化学にはセンスが必要

 北大で始めた研究の中でも、カルボニル基の二重活性化という研究はあまり芽が出ませんでした。一方、有機触媒の研究は非常にスムーズでした。最初にアイデアを2~3年間温め、本格的に研究を始めたのが1998年です。翌99年にはもう論文を発表することができました。いくら努力してもなかなかよい実験データが得られないときもありますが、このときは珍しく望みの結果がすぐ得られ、論文を発表できました。

 私の研究室にいた4年生の中で、とてもセンスのいい学生がいました。これも有機触媒研究がうまくいった要因の一つだったと思います。

 私は料理が好きで、今でも週に1回は包丁を握ります。有機合成と料理は、よく似ていると思います。レシピどおりにつくってもうまくいくとは限らないし、この野菜と肉を組み合わせたらどういう味になるかと想像力を巡らせる。そういうところはセンスが必要です。有機触媒研究の最初を担った学生はセンスがとてもよかったと思います。

 15年ほど前、ハーバード大学に招かれ、1990年にノーベル化学賞を受賞したイライアス・コーリー先生と研究討議をする機会がありました。そのとき、コーリー先生は「あなたがつくったキラル相間移動触媒、私もまったく同じものを考えていたが、うちの大学院生が合成できなかったので諦めてしまった」と話してくれました。研究室の学生の差が、その後の運命を分けたのかもしれません。

次のページ: 「丸岡触媒」の誕生

1 2 3 4 5 6