ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

自分で自分を売り込むくらいの気概を

丸岡啓二

自分だけのケミストリーを

 日本では、独立してからも、指導を受けた教授のもとで行っていた研究を続けるのが一般的です。しかし当時、親しくしていたアメリカの研究者たちと話をすると、アメリカでは研究者が自分の研究室を持つようになると、それまでとはまったく異なる研究をしないと評価されないし、また研究費も取れなくなるというのです。

 それを聞いた私は強く影響を受け、研究者は自分だけのケミストリー、独自のサイエンスをつくるべきなんだと思い、心機一転、まったく新しい研究テーマに挑むことにしました。

 このとき私が始めたいくつかの研究テーマのうちの一つが、有機触媒でした。

 現在のように地球環境問題が人類共通の課題としてクローズアップされている時代ならば、金属触媒は環境に与える負荷が大きすぎるため、有機触媒を研究しようという発想もごく自然に生まれてくるでしょう。けれども当時、まだ有機触媒はその概念すらありませんでした。ただ私はそれまで約20年間にわたり研究してきた金属触媒とは違う研究をしたいという一心で、この新しいテーマを選んだのでした。

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