ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

二次電池開発の世界的な拠点構築へ

逢坂哲彌

異文化を学ぶことの意味

 では、次代を担う人材になるためには、若いときに何をしておくべきか。

 私は1976年、博士研究員として2年間、米国ジョージタウン大学に留学しました。このときに私は高速フーリエ変換をバイオ材料から電気化学材料の解析に導入しました。おそらくこれは世界で初めてのことでした。ところがそんなとき、日本にいる恩師から「週末も研究室に籠っているようではいけない。もっと遊んでアメリカ文化を学びなさい」と叱咤されました。それ以後、私は過ごし方を変えました。毎週金曜日の夜はバーに行ったり、英語で字幕の出る映画を見たりと、週末は文化を吸収できるように大いに楽しむようになりました。

 そうして気づいたのは、米国は、日本以上に人とのつながりの大きさが重要な社会だということでした。そういうことは実際に行かないとわからないものです。また、海外の人と親しくなるには、相手のバックグラウンドにある文化を知ることがとても大事になります。どんなに語学が達者でも、言葉だけではわからないことがあります。だから文化や習慣を体験し、学ぶことが必要なのです。私には世界中に友人知己がいますが、それはお互いに相手の裏にある文化を理解し合っているからこそ得られた財産です。

 今は、英語ができて当たり前の時代になりました。しかし、英語ができても自分の意見が主張できなければコミュニケーションを取る意味がありません。相手の言うことを理解し、そのうえで「ノー」と言うべきはしっかり「ノー」と言う。次代を担う研究者には、そうした資質が必要になります。

相手の言うことを理解し、そのうえで「ノー」と言うべきはしっかり「ノー」と言えるように。

逢坂哲彌[おおさか・てつや] 早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構特任研究教授 早稲田大学理工学術院 名誉教授 1945年、群馬県生まれ。父親が牧師だったため、幼い頃に幼児洗礼を受ける。早稲田大学理工学部応用化学科卒業、早稲田大学大学院理工学研究科博士後期課程修了、工学博士。早稲田大学理工学部助教授を経て1986年、同学部教授に。2016年から現職。中国紹興県経済顧問、上海交通大学客座教授、最高裁判所専門委員などを務めたことも。日本磁気学会会長、電気化学会会長、米国電気化学会(ECS)President、国際電気化学会(ISE)Vice Presidentなどを歴任。2010年には紫綬褒章も受けている。今も教会に通う熱心なクリスチャン。趣味はオルガン演奏と絵画収集。「則天去私」と「上善若水」が座右の銘という。

1.1 MB

1 2 3 4 5 6