次代への羅針盤
二次電池開発の世界的な拠点構築へ
逢坂哲彌
特任研究教授第1号
早稲田大学の教員は70歳定年制です。私は1945年生まれですから、2016年3月末をもって定年退職を迎えるはずでした。ところがそろそろ定年という頃に大学から特任研究教授に任ぜられました。特任研究教授というのはそれまでの早稲田大学にはなかったポジションで、つまり私が第1号ということになります。簡単に言えば、公的な大型研究プロジェクトを外部から導入して展開するのが特任研究教授のミッションです。
私は以前、早大本部で研究推進部を創設したときの初代研究推進部長を務めていました。その頃は、週に1回は文部科学省や経済産業省に顔を出していたものです。それは文科省や経産省の方たちと顔つなぎをするとともに、官庁が大学にどのような研究を求めているのか、そのニーズを探り出すのが目的でした。もちろんアポなしで課長以上の方にお会いすることなどめったにできません。しかし、お会いできないときには必ず日付を記入した名刺を置いていくようにしました。そうすると後日、必ず先方から連絡が来ます。官庁との人脈がそれほど豊かでない私大は、地道な活動をしなければ、国公立大学との競争にはなかなか勝てません。今、私が特任研究教授として大型の研究プロジェクトを私大に導入することに成功しているとしたら、その頃の経験と人材のつながりが大きな助けの一つになっているのでしょう。もちろん、世界の蓄電池研究の本山である米国電気化学会(ECS)会長を日本人として初めて務め、その世界的な人材のつながりが強化できているのが大きく働いています。