次代への羅針盤
厳しい状況でも、新しい領域の開拓に挑戦を
北川進
運鈍根の奨め
私は若い研究者や学生に、運鈍根、ということをよく言います。
細菌学者のパスツールは「Chancefavorsthepreparedmind」という言葉を残しています。運は準備したマインドに来るということです。あることを突き詰めてやっていると、知らずに向かうべき方向を選んでいるものです。だから学生が失敗だと思ったときに、私は面白い発見だと考えることができたのでしょう。
何か新しいことやわからないことに直面したとき、一度立ち止まり「何だこれは」と思いながらしぶとく考え続ける、それが鈍です。私は自分が鈍であることを自認しています。
3番目の根は根気、粘りです。研究者にはこれがとても大事です。
もう10年以上前のことになりますが、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)のプログラムで、5年間に14~15億円を支援していただけることになりました。この金額にはさすがに緊張しました。ところが当時のJSTの担当者の方から「今すぐ結果が出るようなものでなくて結構、10年後に、そういうことをしていたのかと言われるような研究をしてください」と言われ少し気が楽になりました。好きな研究をしていいのだなと思えるようになったからです。