次代への羅針盤
教養とセンスを磨かなければいい研究はできません
現状のままでは科学技術立国の先行きが危ぶまれる。そんな危機感から藤嶋昭氏は、研究に打ち込む一方で子ども向けの理科教育にも奔走する。
Akira Fujishima
藤嶋昭
東京理科大学栄誉教授
光触媒を使った蚊取り器
光触媒は今、実に多様な用途で実用化されています。たとえば医療分野では、病院の手術室などに大型の光触媒タイルが使われる事例が増えています。光触媒の抗菌・抗ウイルス効果は長期間持続しますから、これからは手術室以外に集中治療室などにも適用が拡大していくと思います。
東京駅八重洲口にある巨大なテント「グランルーフ」にも光触媒のテント膜材が使われています。光触媒には太陽と雨の力で自ら汚れを落とすセルフクリーニング効果や、大気中のNOxを分解して空気をきれいにする効果などがありますから、テント膜材に限らず外装用建築資材に広く使われています。実は40年ほど前に建てた私の自宅は白いペンキで塗ってあり、汚れが目につきます。そのため、4~5年ごとに塗り替えをしていましたが、20年前に外壁に光触媒塗装を施しました。おかげで我が家の外壁はそれ以来、ずっときれいなままです。パリのルーブル美術館のピラミッド型入場口にも、光触媒セルフクリーニング強化ガラスが使用されています。
ちょっと変わったところでは、光触媒蚊取り器もすでに商品化されています。酸化チタン光触媒シートを応用して二酸化炭素を発生させ、蚊をおびき寄せて、ファンで吸い込むという仕組みです。