One Hour Interview
高分子合成で有機太陽電池材料を創製
東原知哉
ジャーナルに残る仕事を
学生のモチベーションを高める方法はありますか。
自分自身が楽しんで研究していないとだめでしょうね。毎週月曜日と火曜日にゼミの学生と集まって、こんなアイデアがあるけどどうだろう、と議論する場を設けています。昨年度からはお昼に意見を交換するランチタイムミーティングも行うようになりました。アイデアを出し合ったり意見交換する時間はとても楽しいですね。面白そうなアイデアは実験して検証しています。その場合、失敗することのほうが多いのですが、その失敗データをきちんと蓄積することを大切にしています。学生は失敗を恐れる傾向にありますが、間違えることはとても大事ですよ。
失敗も前進ですよね。
おっしゃるとおりです。うまくいかないパターンがわかるわけですから、それは新しい情報、知見です。失敗もプラスだと自分にいい聞かせれば、失敗を第三者的な目で見ることができるようになっていきますし、失敗を恐れなくもなります。
研究者になってよかったと思うのはどういうときですか。
学生との共著論文が採択されたときですね。建設関係の方がよく「地図に残る仕事」といいますが、あれと似た感覚があります。海外の著名なジャーナルだと、1800年代まで遡って論文を見ることができます。論文は、永遠とはいいませんが、私が死んだあとも永く残ります。自分の単著論文だとそれほど感じないのですが、学生との共著論文は、この時代に学生と教員が同じ課題に向き合って試行錯誤して成果を出したエビデンスが残るということで、それはとてもうれしいことです。
論文は研究の成果であると同時に教育の成果でもあるというわけですね。
ただ、その一方で「論文を出して終わり」では意味がないと思っています。企業共同研究や事業化を通して社会に還元できるところまで結びつく研究成果を出したい、といつも目標にしています。
山形大学 大学院有機材料システム研究科 有機材料システム専攻 教授 東原知哉[ひがしはら・ともや] 1977年、香川県生まれ。東京工業大学工学部高分子工学科卒業。同大学院理工学研究科有機・高分子物質専攻博士課程修了。博士(工学)。日本学術振興会特別研究員、米マサチューセッツ州立大学ローウェル校博士研究員、東京工業大学大学院理工学研究科助教、科学技術振興機構(JST)さきがけ研究員、山形大学大学院准教授などを経て2019年より現職。2022年4月より山形大学学長補佐/有機エレクトロニクス研究センター・センター長も兼務。もともとの趣味は海外の大学巡りとカラオケだったが新型コロナのために今はできず、最近は「棚田めぐりにはまっている」という。
[第33・38回松籟科学技術振興財団研究助成 受賞]
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