One Hour Interview
高分子合成で有機太陽電池材料を創製
東原知哉
フレキシブル化への挑戦
今の目標は?
いくつかありますが、10年くらい前から取り組んできたテーマの一つでもある、有機太陽電池に関する研究です。光が当たるとプラスの電気になるp型と、マイナスの電気になるn型の2種類の半導体高分子を混合してつくろうとしています。このとき、混合の仕方を適切に制御することで、エネルギー変換効率を最適化することができます。
資料には、フレキシブル化とストレッチャブル化がポイントだとあります。
最近の医療工学や健康診断の技術分野では、皮膚に貼り付けたり、体内に埋め込んだりして稼働する生体センサーやウェアラブル端末が注目されています。この素材分子のフレキシブル化とストレッチャブル化が期待されています。例えばペースメーカーは従来、手術によって体内に埋め込んでいましたが、薄いフィルム状にして、胸に貼り付けて使うものが登場すれば、患者さんの身体的な負担は大きく軽減されるでしょう。ただ、皮膚に貼るものや体内に埋め込むデバイスを駆動するにはエネルギーが必要になります。重いバッテリーは患者さんの負担になりますので、電池も軽量・フィルム化していく必要があるわけです。
そのためにフレキシブル化やストレッチャブル化が必要だということですね。
私たちが特に注目しているのは、半導体高分子をいかに柔らかくするかということです。今主流になっているシリコン太陽電池は、エネルギーの変換効率の面では利点があるのですが、割れやすいという問題を抱えています。さらに、製造過程でシリコンの純度を上げるために高温を必要とし、電気を多く使うことも問題といえます。その点、有機物なら低温プロセスで製造可能ですし、しかも印刷でつくることもできるため、コストが下がるメリットもあります。ただし、半導体高分子を柔らかくすることは簡単ではありません。変換効率を上げるためには、分子がきれいに並んだ結晶質にする必要があります。電気は結晶化した部分のほうが流れやすくなるからです。しかし、柔らかくするためには結晶質ではなく、分子の配列が乱れたような構造にすることが必要です。