ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

高分子合成で有機太陽電池材料を創製

東原知哉

10%の差を埋めるためには……

非晶質ということですか。

 そうです、非晶質です。でもこれはトレードオフの関係になっています。変換効率を上げようとすると硬いほうがよく、柔らかくすると変換効率は下がります。皮膚上で稼働する太陽電池をつくろうとすれば、最低限10~20%の伸び縮みを許容する材料でないと難しいでしょう。この二律背反をいかに解決するかが私たちの命題であり、課題でもあります。

解決する方法はあるのですか。

 いくつかあると思っています。今注力しているのは、結晶質の硬い部分と非晶質の柔らかい部分がナノレベルオーダーできちんと棲み分けしながら両方を入れた構造にする技術です。硬い部分に電気が流れ、柔らかい部分で伸び縮みを行う。高分子合成の制御技術を駆使することで、相反する機能を発現できるのではないかと検討しています。2020年、松籟財団に助成金をいただいた「ブロックシーケンス精密制御による半導体高分子材料の系統合成と弾性付与」という研究がまさにこれです。

半導体高分子でできたフィルムの作製。ガラス基板上に塗布した高分子溶液から溶媒が揮発していくと、紫色のフィルムが形成される。

目指すゴールから見たとき、今はどのあたりまで進んでいるのでしょう。

 まだ道半ばというところです。無機の半導体に比べると、半導体高分子はエネルギー変換効率で10%ほどの開きがあります。

その10%を埋めるにはブレークスルーが必要ですか。

 そうですね。効率を上げるために材料設計の抜本的な見直しが必要です。太陽電池のブレークスルーだけでなくトランジスタ材料の革新も重要です。今は有機物トランジスタも印刷プロセスでフィルム化できるようになっていて、それを体内や皮膚上で稼働させられるようにできないかと考えています。しかし、そこは私たちだけでは難しく、バイオに詳しい方と組んで研究を進める必要があります。

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