ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

セルロースから液晶材料を創製

古海誓一

これからも続けたい低負荷材料の研究

古海先生は、なぜ物質・材料研究機構から東京理科大に転じてこられたのですか。

 大学生の頃から将来は国の研究機関で仕事をしたいと考えていました。ずっと同じところにいて同じテーマで自由に研究できるだろうと考えていたからです。それは確かにそうだったのですが、しかしその自由を得るためには相当の努力をしなければならず、実際、その頃は深夜まで研究をするのが普通でした。また一方でこうした研究機関では、独立した研究を一人で行うのが基本ですから、研究したいテーマがいろいろあってもあまり手を広げられません。その点、大学の研究室には、やる気に満ちた学生が多く、いろいろなテーマを一緒に研究することができます。もちろん、研究だけでなく教育にも携わってみたいという気持ちもありました。

ここまで研究を進めるうえで、どのようなことにご苦労されましたか。

 実際に手を動かして研究するのは学生ですが、当然のことながら研究はうまくいかないこともあります。むしろそのほうが多いくらいで、自分が学生だったときもそうでしたが、実験などに失敗すると学生はくじけてしまうことがあります。そういう学生をエンカレッジして研究を前に進めさせることが大変で、今も難しい課題と痛感しています。まあ、これは私に指導能力がないせいかもしれませんが(苦笑)。しかし、学生が粘り強く研究に取り組んでくれたおかげで、先ほど説明したような興味深い研究成果を得ることができました。本当に感謝しています。

コロナ禍でとにかく大変な時期だと思いますが、これからの抱負はいかがですか。

 セルロースを使った研究には、社会貢献できることから学生も共感してくれています。これから石油資源などが確実に減っていくことを考えると、身近な材料から環境とか人体に低負荷な材料やデバイスを作ることは、ますます重要になっていくと思います。そういう考えをつねに持ちながら、これからもずっと研究を続けていきたいと思っています。

東京理科大学 理学部第一部応用化学科 准教授 古海誓一[ふるみ・せいいち] 1973年、東京都生まれ。上智大学理工学部化学科卒業、東京工業大学大学院総合理工学研究科物質科学創造専攻博士課程修了。独立行政法人通信総合研究所 (現情報通信研究機構)、独立行政法人物質・材料研究機構を経て、2014年から現職。中学生の頃、自宅近くに化学メーカーの研究所があったことから漠然と「ああいうところで仕事ができるようになれば」と思うようになった。同時に、理科の授業でリトマス試験紙の色が瞬時に変わることや、美術の授業ではいろいろな絵の具を混ぜると新しい色を作り出せることに興味を持ち、化学への関心を強めていったという。大学のある神楽坂周辺は評判のいいレストランが多いが、「今は新型コロナウイルスの感染が怖いので、外食はせずにお弁当で済ませることが多い」と話す。

[第36回松籟科学技術振興財団研究助成 受賞]

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