ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

セルロースから液晶材料を創製

古海誓一

セルロースから作るコレステリック液晶

しかしそれでは、研究の進捗にも影響が出てくるのではありませんか。

 残念ながらそのとおりです。いつもは4月スタートですが、今年は緊急事態宣言が出たので、学生に来てもらったのは6月になってからでした。しかもこの夏は猛暑でしたから、研究が進むスピードはいつもと全然違います。

そうした大変な状況の中で先生は今、どういう研究をされているのですか。

 低環境負荷な半導体ナノ結晶とか高分子微粒子を用いたソフトなコロイド結晶などいくつかのテーマで研究していますが、松籟科学技術振興財団の助成金をいただいたのは、セルロースを原料にしたコレステリック液晶の創成を目指す研究です。

ではせっかくですからその助成金の対象となった研究について、もう少し詳しくお聞かせください。

 パソコンやテレビなどのディスプレイに使われている液晶は、ネマチック液晶と呼ばれるもので、液体に近い状態でありながら棒状の分子がある方向に並んでいる構造になっています。それに対してコレステリック液晶は、棒状の分子が幾重にも重なる層状になっていて、一定周期の分子螺旋構造を形成しています。私たちはこのコレステリック液晶に着目して、従来のような石油資源からではなく、セルロースを原料にして作っています。セルロースで分子螺旋構造を形成し、そのピッチを250~400ナノメートルくらいの長さにすると、色を調整することができます。例えばコガネムシは体表面が金属光沢をしていて、緑色のように見えますが、あれはコガネムシの体にあるセルロースと類似した生体分子が金属光沢を放っているのです。私たちが作っているセルロース由来のコレステリック液晶は、生体模倣をしているようなところがあります。

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