One Hour Interview
セルロースから液晶材料を創製
古海誓一
ゴム弾性を有し色が変化する材料を発見
なぜセルロースを材料にしているのですか。
石油資源は今後50年くらいで枯渇すると言われています。さらに海洋マイクロプラスチック問題などでもわかるように、石油資源は環境に大きな負荷を与えてもいます。それに対してセルロースは生分解性を示し、その基本骨格はブドウ糖ですから環境にはほとんど負荷をかけません。しかもセルロースは地球上で最も多く存在する炭水化物で、水と二酸化炭素を使った光合成によって植物が作り出してくれますから再生可能であり持続可能な資源です。そういう意味でSDGs(持続可能な開発目標)の理念にも合致しており、セルロースでコレステリック液晶を作ることは社会にも貢献できると信じています。
セルロース由来のコレステリック液晶にはどのような特性があるのでしょう。
私たちはセルロースの側鎖をアルキル基とコレステリル基で混合エステル化すると、室温付近で鮮やかな反射特性を示す新しいコレステリック液晶材料を見いだすことに成功しました。さらにその研究を発展させ、架橋性のセルロース誘導体を用いて光の三原色を表現できるフルカラーフィルムの作製にも成功しました。面白いことに、この新しいコレステリック液晶の材料はゴム弾性を備えていて、力を加えると色が変わるのです。しかも押すのをやめると形状とともに色までも元に戻るのです。このようなセルロース・コレステリック液晶エラストマー膜に関する報告はほかになく、私たちは2016年に特許を出願しています。