One Hour Interview
新たな有機合成法の確立を目指す
新谷亮
面白いと感じたことをきちんと掘り下げていく
なぜ合成がお好きなのでしょうか。
化学に興味を持つようになったのは高校生の頃だと思います。熱心に教えてくださる先生の影響もあったような気がします。高校ですから大した実験をするわけではありませんが、それでも色が変わるとか単純なことが面白いと感じました。新しいものを自分でつくることができるというのが化学の強みであり面白さではないでしょうか。そうした化学のものづくりの基本になるのが合成ですからね。
京都大学理学部を卒業されてからマサチューセッツ工科大学(MIT)の大学院に留学されましたね。
MITに行くのが夢でした、というわけではなく、中高校生のときに英語に興味を持ち、いつか英語圏で暮らしてみたいと思うようになりました。そういう下地があったうえで、有機合成はアメリカが進んでいる分野ですから行く価値があると考え、学部の3年生のときに大学院はアメリカに、と思いを決めました。4年生のときに入った研究室でアメリカの事情をよく知っていた小笠原正道助手(現徳島大学教授)に相談したら、「行くならトップの大学院を狙ったほうがいい」とアドバイスをもらい、MITに行くことにしました。
留学では何を得ましたか。
一番大きかったのは、いろいろな人と知り合ったことでしょう。今でもコンタクトを取っている人が何人もいます。日本を外から客観的に見ることができたのも大きかったですね。
これからの抱負をお聞かせください。
大学の研究者として、流行りすたりに振り回されず、自分が学問的に面白いと感じたことをきちんと掘り下げていきたいですね。研究の予算を取ろうと思うと、こんな応用ができますとか、こんな使い道がありますということに特化しがちですが、私自身としては企業の下請けのようなことをしたいとは思いません。すぐには役に立たないかもしれないし、役に立つのは100年後かもしれませんが、そういう面白い研究をし続けたいですし、学生にもそういうマインドを持って取り組んでほしいですね。
大阪大学 大学院基礎工学研究科教授 新谷 亮[しんたに・りょう] 1976年、広島県生まれ、兵庫県育ち。京都大学理学部化学教室卒業後、米国マサチューセッツ工科大学大学院に留学し、化学科博士課程を修了して博士号を取得。帰国後、京都大学大学院理学研究科化学専攻 助手・助教、東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻准教授を経て2017年4月より現職。有機化学の研究について「狙っていたものと違うものができて、実はそっちのほうが面白いということがある。それが実験の醍醐味」と語る。教授になった現在も自分で実験をしている。広島カープファン。
[第35回松籟科学技術振興財団研究助成 受賞]
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