ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

新たな有機合成法の確立を目指す

これまでにない分子の変換法や合成法はできないか――。
新谷亮さんはそんな発想で、新たな有機分子の設計・合成法の確立を目指している。

新谷亮

大阪大学
大学院基礎工学研究科
教授

有機合成の方法にはまだ開拓の余地がある

企業であれば一般には、まずターゲットとなる物質があり、それをつくるための合成法を研究しますが、先生の場合はその逆になるのでしょうか。

 そうですね、こういうものをつくりたいということよりも、今までにない分子の変換の仕方とかつなげ方のほうに、より強い興味があります。有機化学、有機合成には100年以上の歴史があり、今さら新しい合成法が必要なのかと疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ある物質が必要になったり欲しかったりしたときに、上手につくる方法がないということが意外にあります。既存の方法を組み合わせれば何とかその物質にたどり着くことはできるけれど、効率がとても悪いということもあるでしょう。どうやって分子を変換していくかという課題には、まだまだ開拓の余地があるのです。

何をつくるかということより、どうつくるかということですか。

 有機化学の教科書には載っていないような反応を開発できれば面白いじゃないですか。その結果として何かの役に立つ物質が初めてできることもあるかもしれません。ただ、私自身は、必ずしも役に立つということばかりを意識してはいません。

世の中にないものをつくるのも難しいでしょうが、世の中にない合成法をつくるのも難しそうですね。

 私自身はむしろそのほうが難しいと感じています。

そうした研究の一環で、縫合反応という新しい反応も開発されました。資料によると、この反応でキノイド型縮環オリゴシロールの合成に初めて成功したとありますが、これは世界初ということですか。

 はい、そうです。ただ、それまでなかったというのは、つくりたくてもつくることができなかったからなのか、それとも誰もつくりたいと思わなかったからなのか、研究プロジェクトのテーマを考えるとき、そういうことは意識するようにしています。すでに存在するものを改良するのでもいいですが、やはり存在しないものを新しくつくるという視点で考えます。縫合反応も、それまで存在しなかった反応を新しく開発したものです。この反応でつくったものが役に立つかどうかはその先の話です。もちろん、だからと言ってつくっておしまいということではありません。できたものの性質などは当然、調べています。

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