One Hour Interview
植物の代謝物を分析し、生命現象の謎に迫る
草野都
オリジナリティを追求したほうが楽しい
お話を伺っていると、ほかの人がやっていないことをするのがお好きなようですね。
そうですね。ほかの人と同じようなことをしていて、負けたら全部なしになってしまうというのは、どうかなと思います。それよりはオリジナリティを追求したほうが楽しいではないですか。
これからはどういうことをしたいですか。
次は、化合物の構造のほうから、どういうことが起きてこういう代謝物ができたのかを解きたいですね。物理の方と組んで共同研究を始めようかと今、考えているところです。量子化学の領域になりますね。
理化学研究所から筑波大学に来られたのが2014年。アカデミアの世界はいかがですか。
筑波大学に来た当初は、教育の負荷はこんなに重いのかと感じました。でもしばらくすると、教育することでこちらが教えられることが多いことに気がつきました。学生さんの指導をすることで、また違う見方ができることもありますし、自分の研究に少しでも興味を持つ学生さんがいると、研究のモチベーションにもなります。授業で学んだことだけでなく、何でもいい、「眠い」でもいいからフィードバックをくださいと言っています。本当に「眠い」と返ってくることもありますが、厳しい批評を言ってくれる学生さんもいます。それを次の講義に生かす方法を考えるのがまた楽しいんです。私は自分の講義で特定の教科書は使わないようにしています。それだけに講義の準備は大変です。でも、質問に来る学生さんがいたりするとうれしいものです。筑波大学は周辺も緑が多くてすばらしい環境ですが、遊ぶところがあまりありません。そこは、学生さんが少しかわいそうですね。私は東京に住んで通勤していますから、遊ぶときはしっかり遊んでいます(笑)。
筑波大学 生命環境系教授 草野都[くさの・みやこ]1972年、滋賀県生まれ。鳥取大学農学部卒。同大学院連合農学研究科生物生産科学専攻博士課程修了。農学博士。秋田県立大学流動研究員、スウェーデン農業科学大学、千葉大学大学院、愛媛女子短期大学生命科学研究所の博士研究員、理化学研究所研究員を経て、2014年より現職。滋賀県に住んでいたころ、琵琶湖の汚染が問題になっていることを知り、環境に関心を持つようになった。砂漠の緑化について学ぼうと鳥取大学に進学したが、「雨が降らないので緑化は不可能」と言われ、天然物化学を学ぶことにした。趣味は音楽。ベースギターを弾く。
[第35回松籟科学技術振興財団研究助成 受賞]
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