One Hour Interview
画期的な触媒の開発で新しい薬のつくり方やシーズを提案
有澤光弘
先祖は富山の薬売り
この研究がさらに発展すると、社会にはどのような貢献ができるのでしょうか。
僕たちは薬そのものをつくることはできませんが、新しい薬をつくる方法論は提供することができます。この研究によって新しい薬のタネを発見しやすくなり、困っている患者さんのもとにいい薬がより早く届けられるようになることを願っています。
話は変わりますが、大学受験のときなぜ薬学部を選ばれたのですか。
実は実家が大阪市内で薬局をやっています。祖父母の代から始めた薬局ですが、もっとさかのぼると先祖が富山の薬売りだったようです。僕は4人兄弟の長男ですからなんとなく家業を継ぐつもりでしたし、両親からも「薬剤師の免許さえ取れば好きにしていい」と言われていました。だから薬学部を選んだのですが、研究をしたら面白くて、ドクターコースのときの教授から「君は大学に残ったほうが向いているんじゃないか」と言われたこともあり、そのままアカデミアに進んでしまいました。 研究のアイデアを出し続けるのは大変そうだし、こんな自分がやっていけるのかという不安もありましたが、だめだったら薬剤師をやればいいという気持ちもありました。親は今でも「大学に入ったらそのまま出てこなくなった」と愚痴を言っていますが(苦笑)。
最後にこれからの目標を教えてください。
大学教員ですからまず教育の目標があります。修士課程の学生は優秀な有機合成化学者に、博士課程の学生は世界に通用するような研究者に育てることが目標です。一研究者としては、今後も新しい有効な薬のつくり方を提案できていけばいいと考えています。
大阪大学 大学院薬学研究科准教授 有澤光弘[ありさわ・みつひろ] 大阪府生まれ。千葉大学薬学部卒業。同大学院薬学研究科博士課程前期課程修了。大阪大学大学院薬学研究科博士課程後期課程修了。博士(薬学)。千葉大学薬学部助手、米ハーバード大学化学科訪問研究員、北海道大学大学院薬学研究科助教授を経て、2013年より現職。2017年、日本薬学会学術振興賞、大阪大学賞受賞。実験が大好きで、研究グループでも自分の実験台を確保したいのだが、「あまり使えないので生産性が悪い」との理由から、学生に明け渡している。趣味は水泳。研究に行き詰まったときは、気分転換に泳ぎに行くことも。4児の父親。
[第35回松籟科学技術振興財団研究助成 受賞]
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