ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

画期的な触媒の開発で新しい薬のつくり方やシーズを提案

有澤光弘

新しい触媒をつくることにこだわる

では具体的な研究の中身について教えてください。まず創薬系の研究から。

 創薬系の研究では、コンセプトとして新しい触媒をつくることにこだわっています。そして実際、創薬系の研究に必要な触媒をいくつかつくっています。その点については後でまたお話しするとして、大阪大学に限らず複数の大学の医学部や国立研究所などと連携して誘導体もつくり、生命科学のブラックボックスに迫ろうということもしています。

 化学をホームベースに、物理に近いことや生物に近いこともしています。あえて境界領域にチャレンジするのが僕らの手法です。生物活性天然物の不斉全合成では、例えばモノアミンオキシダーゼ阻害活性で、パーキンソン病の薬の開発をしています。あるいはインドールオキシゲナーゼ阻害活性ではがんや自己免疫疾患の治療薬にできる可能性のあるものも開発しています。

 前立腺がんの特効薬がないというので、大阪大学医学部と連携して天然物を使った薬を開発中です。慶應義塾大学薬学部とは大腸がん治療薬開発の研究、またある製薬会社とは次世代型化合物ライブラリーに関する研究を進めています。東京慈恵会医科大学医学部・千葉大学薬学部とは、生体内ポリアミンの科学について共同研究を実施しています。

 がんになると、体内でポリアミンという分子内に複数のアミノ基を持つ炭化水素がたくさん発生します。その検出薬をつくれば通常は発見が難しい深部臓器がんの早期発見ができるのではないかという発想で始めた研究で、RNAアプタマー(核酸抗体)をつくっています。

 またやはり深部臓器がんへのアプローチを目的に、北海道大学電子科学研究所・理化学研究所と共同で新しい近赤外色素の開発にも取り組んでいるところです。核の周りに集積して染色する色素を投与し、近赤外線カメラで見るという仕組みになる予定です。

SAPdの製造方法とそれを用いたPdクロスカップリング

次のページ: ppmからppbレベルに下がった漏洩量

1 2 3 4 5