ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

CO2を資源として活用できる道を切り開く

斎藤 進

パラダイムシフトが起きる可能性も

実用化するには1万個くらいまでにしないといけないのですか。

  それくらいが目安になります。

順調に行けば1万個にできるまであとどれくらいの時間がかかりますか。

  (苦笑しながら)それが一番しんどいところです。どうでしょうか、 3年以上はかかると思います。数字で書くと簡単そうですが、触媒というのは反応の途中でどんどん死んでいくものなんです。定義的には死なないものを触媒というのですが、実際にはどんどん死んでいきます。ですから活性を上げるには寿命の長い頑丈な触媒をつくらないといけないのですが、それに必要な詳しい構造がまだ分かっていません。死んでいくというか、壊れていくそのメカニズムを調べたところ少し分かったこともあるので、どういう分子設計をすれば壊れない触媒をつくることができるのか、今はそこを研究しているところです。

これが実用化されると社会にはどのようなインパクトがありますか。

  製品の製造工程で副生成物としてカルボン酸ができ、持て余している企業はたくさんあります。そのカルボン酸がたとえばポリマーの原料になったり、医薬品や農薬などの原料になったりするわけです。今までゴミとして廃棄していたものから新しい価値が生まれる可能性があるのですから、社会に与えるインパクトは相当なものになるはずです。さらに温暖化の原因となっているCO2をカルボン酸へと変換して資源として利用できるようになれば、パラダイムシフトが起きますよ。

カルボン酸は無尽蔵にあるのですか。

  無尽蔵ではないかもしれませんが、すごくたくさんあるのは間違いありません。身近なものだとアミノ酸やDHA(ドコサヘキサエン酸)もカルボン酸です。生物の力を人工的に変えていろいろな種類のカルボン酸を大量に製造することもできます。人が運動すると体内で生まれる乳酸、それからお酢(酢酸)もそうですね。カルボン酸の水素化は、お酢をお酒(エタノール)に変えるようなものです。

蟻のギ酸もカルボン酸と聞いたことがあります。

  そうですね。ギ酸を水素化するとメタノールができます。ただ、蟻をたくさんすりつぶしてメタノールをつくるよりは、CO2からつくるほうがいいと思いますよ。

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