ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

複素環新規合成法を創製し、有機n型半導体材料の開発に挑む

倉橋 拓也

専門分野にとらわれない感性が大事

これがしたいというものがまだ見つかっていないのですか。

 模索しているところです。今になって物理も面白いと思うようになってきましたし、有機合成と生物を組み合わせたようなバイオケミストリ ーもあり、生物学も選択肢のひとつに入れておこうと思っています。

専門を掘り進めていくのと、広げていくのと、どちらがいいと思いますか。

 僕はこれまではずっとひとつのテーマに絞って研究するのがいいと思っていました。でも、研究室の松原誠二郎先生がいろいろなことに興味を持たれる方で、その影響もあり最近は何でもやってみようという気持ちが強くなってきています。松原先生は美術品とか陶器などにも興味をお持ちです。専門分野にとらわれない感性が大事なのだと思い、僕も時間があれば美術館に行ったりしています。どんなことでもすべて学ぶことには意味があるとこの頃、つくづく思うようになりました。高校生のときに古文などももっと勉強しておけばよかったなと今頃思っています。本当にやりたいことを見つけるためにも、いろいろなことをした方がいいのかなと…。今40歳ですけれど、あと10年くらいはいろいろやってみて、その次の10年でそれを仕上げるという感じかなと思っています。

いろいろやってみたいということであれば、他の分野の先生やほかの大学の先生との交流も多いのでしょうか。

 「SPring-8」では、他の研究室の方と一緒に機能性触媒による二酸化炭素の資源化というテーマで研究しています。ヘモグロビンの補酵素であるポルフィリンを触媒に使うのですが、それがどう働いているのか調べるためには「SPring-8」の設備が必要なのです。

 自分たちだけでは取り組めないところは、どんどん研究協力者を増やしていこうと思っています。

本当にいろいろな研究をされていますが、混乱することはありませんか。

 今のところは大丈夫です。てんてこ舞いしているところはありますが(笑)。とにかく既存の高分子構造を有する材料だけでなく、新たな高分子構造を持つ材料の創製にこれからも挑戦していくつもりです。

京都大学大学院 工学研究科材料化学専攻 准教授 倉橋拓也[くらはし・たくや]1975年、京都府出身。京都大学工学部工業化学科卒。京都大学大学院工学研究科材料化学専攻博士後期課程認定退学。工学博士。日本学術振興会特別研究員、独ゲッティンゲン大学フンボルト財団博士研究員、京都大学大学院理学研究科大須賀研究室博士研究員を経て2007年、京都大学大学院工学研究科松原研究室助教。2012年より現職。2014年「文部科学大臣表彰若手科学者賞受賞」。最近、船舶1級免許を取得。「いつか、家族を乗せたクルーザーを操縦して釣りに行きたい」と言う。

「第32回松籟科学技術振興財団研究助成受賞」

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