ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

複素環新規合成法を創製し、有機n型半導体材料の開発に挑む

倉橋 拓也

研究の範囲を広げたい

その研究がうまくいくと、将来、どんな成果物が実現するのでしょう。

 分子デバイスが実現するのはまだだいぶ先のことでしょうが、たとえば人間が飲み込めるようなコンピュータができるかもしれません。コンピュータを搭載した薬というか、自分で考えて作用するような薬とか…。あくまでもたとえばの話ですよ。ひとつの分子でトランジスタとして使うとか、それを使ってコンピュータをつくるとなったら、まだ半世紀くらいはかかるのではないでしょうか。1分子を取ってきてその物性を測るだけでも非常に難しいことです。合成反応で使うときは6.23×10の23乗の分子を一気に扱うのに対し、単分子でコンピュータをつくるとなるとそれを1個1個つかんでつなげていかなければいけないわけです。今の技術では相当難しいことです。ただ、そのための準備はしておかなければいけないと思います。

 夢物語のようなものですが、小さくするということは大事です。そのためには分子デバイスが必要だと思いますし、それを実現するためにはおそらく計測技術の発達も必要です。今、僕たちが有機化学の研究をできるのも、計測技術に支えられているからです。

 最近、兵庫県にある大型放射光施設の「SPring-8」に行って、いろいろな分析手法を身につけようかなと考えています。手法を学ぶことは研究の範囲を広げるうえでも大事なことですから。

研究の範囲を広げたいと考えているのですか。

 広げたいですね。自分が何をしたいのか、知りたいのです。研究者としての人生で、私はこれを研究したといえるだけのものを見つけたいのです。

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