ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

クロスカップリング反応を応用して有機薄膜太陽電池の開発に邁進

西原康師

国内外の多くの研究者と交流を深める

反応開発の面白さはどういうところにあるのでしょうか。

 どのルートをたどって山頂まで行くかという点で、登山と同じですよ。同じ化合物でもそれをつくる方法にはいろいろなアプローチがあります。まだ誰も使ったことのない反応で、収率が上がるとか、短工程で合成できるようになるとか、安い材料でつくれるようになるとか。そしてその反応を他の化学者が使ってくれるのを見るのが楽しいんです。

研究過程で国内外の多くの研究者と交流を深めながら、研究生活を楽しみたいと考えていらっしゃるそうですね。

 いろいろな研究者と友人になり、化学の話で盛り上がり、考え方や価値観の違いなどを知り、それを共有できるのはとても素晴らしいことだと思います。大学の教員というのは、基本的に教職者ですから、人材育成を第一義的な目的に据えています。実は僕はもともと高校の化学の教師になりたくて、広島大学の理学部に入ったんです。小学校の高学年の頃から実験が好きで、その頃から化学が好きになりました。身の周りの現象は、ほとんどが化学の現象ですよね。そういうと物理の先生が怒るかもしれませんが(笑)。でも、人体が有機化合物でできていることを考えたら、体の中で起こっていることのほとんどが化学現象ですよ。そういう身近な学問である化学を高校生に面白く教えたい、化学に興味を持ってもらいたいと考えていたんです。

それがなぜ大学教員に?

 学部4年生のとき、研究室の指導教員が大学院への進学を勧めてくれました。そのときはまだ高校教員になるつもりだったので、2年くらい遠回りしてもいいかと考え、進学したのですが、ちょうどその頃、広島大学に来たアメリカ人の先生の講演を聞きました。しかし英語がさっぱり分からず、悔しくてその夜は眠れないほどでした。そこから一念発起して毎日NHKのラジオ講座で英会話の勉強をしたのですが、それを見ていた指導教員が今度はアメリカへの留学を勧めてくれたんです。そして運よくノートルダム大学の先生が留学資金を出してくれることになりました。ただ、修士の2年のときに約1年間留学したので、就活ができなくなりました。それで、それなら高校ではなく大学でより専門的なことを教える教育の道に進もうと考えるようになったのです。

結果としてその選択はどうでしたか。

 これは天職ですよ。大学教授、一度やったら止められません(笑)。

岡山大学大学院 自然科学研究科教授 西原康師[にしはら・やすし] 1968年生まれ(45歳)。広島県出身。広島大学理学部化学科卒業。同大大学院理学研究科化学専攻修了。1997年、総合研究大学院大学で博士号取得。その間に米ノートルダム大学と米アイオワ大学に留学。日本学術振興会特別研究員、東京工業大学資源化学研究所助手などを経て、2004年3月に岡山大学理学部化学科助教授に着任。2010年4月より現職。一女一男の父。休日は小2の長男と遊んでリフレッシュしている。

「第30回松籟科学技術振興財団研究助成受賞」

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