One Hour Interview
クロスカップリング反応を応用して有機薄膜太陽電池の開発に邁進
西原康師
やってみないと分からない
先生方が今、開発している有機薄膜太陽電池の変換効率はどれくらいですか。
最初にできたものを7月に評価したところ、1.7%でした。まだ、企業の開発している電池の足元にも及ばないレベルです。
その結果に落胆されましたか。
そうでもありません。オリジナルの材料を使って初めてつくったものが1%を超えたので、自分たちの間では結構喜んでいます。本当は喜んでいてはいけないのかもしれませんが、これまでこういう開発をしたことのない人間が初めてつくって1%を超えたのだから、何とかなるんじゃないかと(笑)。割と楽天的な性格なもので…。
先生たちが開発した有機薄膜太陽電池の変換効率が15%にいく前に、その企業が15%を達成して実用化したら、先生たちの研究はどうなってしまうのですか。
その会社は、3年以内に実用化するのではないかと見ています。でもそれで僕たちの研究の意義が失われるわけではありません。その企業が実用化した電池よりもっと低コストでできるかもしれないし、変換効率ももっと高くすることができるかもしれませんから。
この開発で一番難しいのはどういうところでしょうか。
こうすればいいという概念はすでに確立されています。でも、その概念に合致する材料をどうつくるかが課題です。やってみないと分からない、というところがありますから。有機薄膜太陽電池はITO(酸化インジウムスズ)の基板があり、ガラス基板があり、その上にある材料を塗り、そのあとに高分子材料を塗り、くなるような作業です。去年、外国のあるベンチャー企業が倒産しました。ノーベル化学賞を受賞した米国の化学者が有機薄膜太陽電池を開発するためにつくった会社でしたが、とうとう結果が出ずに資金が足りなくなってしまったようです。