伝説のテクノロジー
淡路いぶし瓦
栄和瓦産業代表取締役・浜口健一さん
売上の3~4割は輸出
栄和瓦産業の創業は1978年。すでにガス窯が普及していて、同社も創業当初からガス窯を使っていた。
400年以上の歴史を持つ淡路瓦の産地として、同社は後発といえる。浜口さんの父親が創業したのだが、後発を承知でなぜ創業したのか。その理由を浜口さんはこう説明する。
「当時、瓦産業は売り上げも収益もとてもよかったのです。瓦を出荷するときに船に積み込むアルバイトのお給料でさえ、ずいぶんよかったと聞いています。言わば成長産業だったのです」
瓦づくりと聞くと、手作業が多いイメージを思い浮かべるかもしれないが、栄和瓦産業は25年ほど前からオートメーション化を導入している。粘土がベルトコンベヤーで運ばれ、プレス機で次々に成形されていく。もちろん鬼瓦など細かい加工が必要なものは手作業の工程も多いが、基本はオートメーションだ。
現在、淡路の瓦工業組合に加盟しているのは65社。そのうち約10社は販売会社だが、製造会社でもフル稼働しているところはほとんどないという。そんな中で浜口さんの会社は連日フル稼働だ。
「輸出をしているのが大きいですね。うちの売上の3~4割は輸出です」
と言う浜口さんによれば、輸出先は韓国、中国、台湾、フィリピン、さらにカナダ、欧州など幅広い。
「今はカナダのお寺から受注した高さ2.7メートルの鬼瓦を2つ、つくっているところです。中は空洞にして、そこに鉄骨を入れて補強しています。フィリピンでは金属屋根だと雨が降ったときの音がすごいので、富裕層には住宅の屋根を瓦にしたいという人が多いそうです。向こうは住宅工事費の15%くらいを屋根に充てるといいます」
国内市場が縮小する一方で、輸出に活路を見出す浜口さん。「この環境下でも生産を落とさずこれましたが、淡路瓦の輸出の94%を当社が占めていることが残念です」と産地の活性が進まないことを危惧する。