伝説のテクノロジー
淡路いぶし瓦
栄和瓦産業代表取締役・浜口健一さん
淡路独特のいぶし瓦
瓦は、まず粘土と土を混ぜ、水分を加えてから成形し、いったん乾燥させてから焼成するという工程を経てつくられる。成形した後の乾燥は短くても3日、鬼瓦のような肉厚のものの場合は1カ月かけることもある。
「内部に水分が残っていると、焼いたときに割れてしまうので、ゆっくり時間をかけて乾燥させる必要があります」
乾燥させた瓦は窯に入れて焼く。栄和瓦産業には一度に4,000枚の瓦が焼ける窯が10基ある。焼成温度は最高で1,000度。三大産地の瓦の中で焼成温度が最も低いという。これも土の持つ特性に合わせたものだ。
今はコンピュータで温度を管理しているが、瓦を窯から取り出すのに窯内を400度まで下げるには丸1日かかる。したがって10基の窯すべてに4,000枚の瓦を入れても焼成に1日、冷却に1日かけ、計2日でできる瓦は4万枚。1日あたりだと2万枚ということになる。
いぶし瓦の場合は、一度焼き上がった後に煙でいぶすという工程が加わる。このとき焼成窯にはガスだけを入れ、空気が入らないようにする。そうすることで窯内が不完全燃焼の状態になり、瓦の表面に煤が付く。この煤は炭素の薄い膜で、冷えてから煤を落とすと淡路瓦独特の光沢のある銀色になるのである。
「昔は焼くときに火力の強い松の木を燃料にしていました。いぶすときには松の葉も入れていたそうです。松の葉を燃やしながら水をかけることで、不完全燃焼させていたのです。しかし、戦後から高度経済成長期にかけて住宅の建設ラッシュが続くと、松の木では製造が間に合わなくなってしまい、ガス窯を使うようになりました」