伝説のテクノロジー
注染の手ぬぐい
戸田屋商店代表取締役・小林賢滋さん
日本土産にうってつけ
戸田屋商店には「梨園染」というブランドがある。しかし小林さんは「問屋は表に名前を出すものではない」という考えに徹してきた。2001年にはウェブサイトを開設したが、直営店などは一切出してこなかったし、宣伝もしてこなかった。ところが昨年、コロナ禍で全国的にマスクが不足したとき、社員用に「手ぬぐいマスク」をつくり、店頭にも置いてみた。するとこれが話題になり、大きな反響を呼んだ。
「うちは営業があまり得意ではないのですが、コロナ禍でゆかたも手ぬぐいも売り上げが大幅に減っています。販路を広げるチャンスがあれば広げていきたい、と今は考えています」
今後、期待できそうなのは海外市場だ。現在は外国人観光客がほぼゼロだが、コロナ禍以前は手ぬぐいを何十枚も買っていく外国人観光客が珍しくなかったという。手ぬぐいはかさばらないし軽いので、日本土産にうってつけなのだ。
「欧州には昔からテキスタイルを飾る文化があり、手ぬぐいも人気があります。今も海外からメールで注文が来ることがあり、需要は増えていると感じています。輸出の手続きなどもだんだんわかってきたので、さらにファンを増やしていきたいですね」
ニューヨークやパリの街角を、腰に手ぬぐいをぶら下げた外国人が闊歩する。いつかそんな光景を見ることができたら面白そうだ。
小林賢滋[こばやし・けんじ](写真中央)1959年生まれ。高校生の頃から家業の手伝いをし、立教大学卒業後、正式に入社。1997年、6代目当主として代表取締役に就任。バブル期には「銀行員が毎日のようにマンション建設営業に来ましたが、かたくなに断りました」と言う。手ぬぐいマスクをつくったときは社員全員に「売れないのでは」と言われたそうだが、折れずにビジネスチャンスにつなげた。趣味はゴルフ。
0.1 MB