伝説のテクノロジー
木綿と注染が織りなす和の魅力
昔ながらの技法でさまざまな図柄を染め抜いた手ぬぐいを商う戸田屋商店。
江戸の粋を現代に伝える手ぬぐいが今、若い人や外国人に人気を広げている。
戸田屋商店代表取締役・
小林賢滋さん
手ぬぐいにアートを見いだす人たち
手ぬぐいをつねに持ち歩いているのは、噺家くらいだろうと思っていた。ところが今、若い女性の中には、弁当を包んだり、バッグのカバーにしたりして、手ぬぐいを使う女性が増えているのだそうだ。しゃれた色柄の手ぬぐいをスカーフ代わりに首に巻くのがクールなのだとか。手ぬぐいにアートを見いだし、インテリアのように飾って楽しむ人もいるという。都心にある某高級旅館でも、宿泊客が寛ぐための部屋に手ぬぐいを飾っていると聞いた。
「私も手ぬぐいを使うのは高齢者が中心だと思っていましたが、ずいぶん前から仕事を持っている若い女性の間で手ぬぐいを使う人が増えているそうです。特に東日本大震災の後は、日本の伝統的なものが見直される傾向が強まり、手ぬぐいをいろいろな用途でお求めになる方が多くなりました」
東京・日本橋に店を構える戸田屋商店の小林賢滋社長が言う。小林さん自身、いつもポケットにはハンカチ代わりに手ぬぐいを入れている。
「手を拭いたり汗を拭いたり、手ぬぐいはどんなシーンにもいいんですよ。木綿は吸水性がいいし乾きも早い。これで風呂にも行けます」
戸田屋商店は1872(明治5)年に日本橋で創業。もともとは木綿金巾(木綿織物)の問屋だったが、その後、ゆかたの製造卸もするようになった。今や、ゆかた・手ぬぐいの老舗である。小林さんはその6代目だ。
かつて手ぬぐいはゆかたの“おまけ”のような扱いだった。商店や役者が客に配るためにまとめて注文することはあったが、手ぬぐいだけで商売になることはめったになかった。今は雑貨店などでも手ぬぐいを扱っているが、少し前までは呉服店や呉服売り場の片隅にほんの少し置いている程度だった。
「昔は反物をゆかたに仕立て、着古したらそれを切って手ぬぐいとして使い、そのあとはおむつに使い、ボロボロになったら生地を裂いてハタキにして使ったものです。わざわざ買うようなものではありませんでした」