ハリマ化成グループ

伝説のテクノロジー

燻を担当するのはこの道20数年の神宮寺秀哉さん。丁寧にムラなく燻すのに1日以上はかかる。自然な色に仕上がるのは熟練の職人のなせる技だ。

伝説のテクノロジー

鹿革に漆を載せる伝統技法で財布や小物入れなどをつくる甲州印伝。江戸時代からこの技法を守り続けてきた印傳屋 上原勇七は、一方では海外ブランドとコラボするなど、革新による美も追求し続けている。

甲州印伝
鹿革と漆が綾なす伝統美

藁と松やにを使う燻(ふすべ)技法

 窯の焚口に藁束を入れ、火をつけると、窯の上部に設けられた口から白い煙がもくもくと立ち昇る。その煙が直径1メートルほどの木製の筒(タイコ)に巻き付けられた鹿革を燻(いぶ)す。職人は煙が均等に鹿革にあたるように注意深く筒を回転させながら左右に動かす。やがて職人が新聞紙にくるんだ松やにを焚口に入れると、煙の色がやや濃くなる。1回30分ほどのこの作業を10回前後繰り返すと、最初は白に近い色だった鹿革が褐色に変化する。これが、印傳屋上原勇七が受け継ぐ燻と呼ばれる伝統技法だ。燻(ふすべ)るときに鹿革に糸を巻き付けたり、型紙を使って糊置きし柄を付けることもある。

 「甲府印伝商工業協同組合の組合員は現在4社ですが、燻の技法を用いているのは私たちだけです」

 そう言うのは、印傳屋 上原勇七の上原重樹社長だ。

 この技法を使った商品は、半年から1年くらいの間は燻の香りが残る。この技法は非常に手間がかかるため、客から要望のあったオーダー品にしか施されない。商品全体から見れば数パーセント程度。価格も通常の商品よりは数倍高い。それでも根強い人気があるという。

次のページ: 江戸期に考案された漆技法

1 2 3 4