伝説のテクノロジー
1本の木で命の尊厳を表現
盆栽作家 小林國雄さん
日本の盆栽は引き算の美
「中国では盆景と言って、盆栽の横にミニチュアの家や動物の像を置いたりします。ちょっとガーデニング的なところがありますね。中国の盆栽は全体に大きく、華美華飾の趣があります。それに対して日本の盆栽は、和歌や俳句のような凝縮した美を求めます。油絵やガーデニングが足し算の美なら、日本の盆栽は引き算の美。侘び寂びの世界に通じるものがあります」
と語る小林さんによれば、どんな木でも盆栽にすることはできる。けれども盆栽は、背丈数十センチのものを数十メートルの巨木であるかのように見せるのが醍醐味。だから葉の大きなものは盆栽に適さない。
畑で苗木から育てるときには、木が大きく育ちすぎないように、土の中に瓦を置いてその上に植える。そうすると真下に伸びる直根の成長が止まり、横根が八方に広がるようになる。盆栽として鉢で育てるときには直根は切ってしまう。
「盆栽にとって大事なのはまず根張り。足元がきれいだと全体が美しくなります。八方根張りはとても大事な要素です」 盆栽にする木の種類は、大きく分けると、松、真柏、雑木、そして実もの・花ものに分類することができる。松では黒松、赤松、五葉松が主役だ。
「松は樹齢が長いし、盆栽の中では特別な存在でしょう」