伝説のテクノロジー
1本の木で命の尊厳を表現
盆栽作家 小林國雄さん
1日15時間、盆栽と関わる
もともとは園芸農家の実家を継いで、サツキなどの植物を栽培していた。しかしどこか飽き足りないものを感じていた28歳のとき、衝撃の出会いをした。「たまたま見に行った盆栽展で『奥の巨匠』という作品に強い衝撃を受けました。枝や幹の多くが枯れて白くなり、皮だけで生きているような五葉松の盆栽でした。樹齢は500年から600年くらいだと思いますが、骨がむき出しになったような状態だったんです。なぜこんな状態になっても生きているのだろうと不思議に思い、そこに命の尊厳を感じて、自分もこんな盆栽をつくりたいと思ったのです」
そこから一気に盆栽にのめりこんだ。ただ、誰かの弟子になるようなことはしなかった。すべて独学である。盆栽展などに行き、作家が盆栽をつくっているところなどを見ては、その技を盗むようにして身に付けていった。
朝の4時半に起き、1日15時間、盆栽と関わる毎日を今まで40年間ずっと続けている。「夢も、盆栽の夢しか見ません」 失敗もたくさんしてきた。「お恥ずかしい話ですが、ざっと1億円分くらいは枯らしているでしょう。だからこそ、今の成功があるんです」としみじみと語る。
BONSAI美術館の一角には、盆栽の墓がある。枯らしてしまった盆栽を供養するためだ。年に1回は、僧を招いての法要も行っている。
盆栽は1300年ほど前、中国で生まれた。日本に伝わってきたのは800年ほど前というから、鎌倉時代のことだ。その後、室町時代に今の形が確立されたという。