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伝説のテクノロジー

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木を診断し、守り、育て、愛情をそそぐ

樹木医 塚本こなみさん

フラワーパークの経営再建も

 1994年にはあしかがフラワーパークにあった巨大な藤の木の移植を頼まれ、2年がかりでこの大仕事をやってのけた。そして、これをきっかけに塚本さんは同フラワーパークの園長に就任。収益が悪化していた経営を再建した。その経営手腕が見込まれ、2013年からは、はままつフラワーパークの再建にも取り組んでいる。

塚本さんは木々のことを彼らとかあの子と言う。彼らが見事に咲く、あしかがフラワーパークの大藤。

 「ここはアップダウンが多いので、電動のシニアカーを用意したりエレベーターを設置したりしました。過去のデータを見て、お客さまの少ない7~9月は入園料を無料にし、3月から有料として梅が咲いたら700円、桜が咲いたら900円といった美しさに応じた変動料金制を取るようにもしました」

 そうした改革が功を奏し、以前は年間25万人前後だった入園者は今や50万人を超えるまでに増えている。

 一方では長年にわたり修得してきた知見や技術の伝承にも取り組んでいる。特に藤については専門家が少ないため、講習会などを開いて積極的に指導している。今は藤のことを学ぶために台湾からはままつフラワーパークへ研修に来ている人もいる。

 そんな塚本さんが、これから力を入れたいというのが園芸療法だ。

 「引きこもりの方を何人かお預かりして、植物の世話をしていただいたりしています。1年半お預かりしている方は少し笑顔が戻ってきて、言葉も出るようになってきました。自分が植えたり育てたりした植物を、お客さまが見て『きれい』と言ってくれたら、自信がつき、生きていく力になります。そういう人のために、一般のお客さまの目には触れない場所に温室も2棟、建設しました。園芸の技術を身に付けてここで働いて社会復帰のきっかけになるような職場をつくるのが夢なんです」

 木を慈しみ、自然を愛し、人に救いの手を差し伸べる――。

 塚本さんはこれまでも、そしてこれからも、生きとし生けるものすべてに深い愛情を注ぎ続けていくのだろう。

はままつフラワーパーク。木が元気な理由は職員が深い愛情で育てているから。

つかもと こなみ 1949年、静岡県生まれ。1992年、女性としては初めての樹木医に。特に巨木や古木の移植を得意とし、あしかがフラワーパークの巨大な藤の木の移植を成功させたことで、業界ではつとに有名。フラワーパークの経営再建でも辣腕を振るう。公益財団法人浜松市花みどり振興財団理事長でもある。

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