伝説のテクノロジー
消えかけた国産線香花火の灯を守る
花火製造職人 筒井良太さん
最高級品は40本で1万円
3年前からは贈答用の線香花火も売り出した。徹底して素材にこだわった商品で、紙は福岡県八女市の手すき和紙を使い、それを草木染で染色している。
妻の今日子さんのアイデアで、持ち手の部分の紙を花弁の形にデザインした線香花火が桐の箱に入った最高級の「花々」という商品は、和蝋燭と蝋燭立てがセットになって40本入りで1万円。線香花火に1万円出す人がいるのかと思うかもしれないが、結婚式の引き出物や企業のノベルティなどに使われ、好評だという。
線香花火以外の商品も、30種類くらいつくっている。
昨年は、製造所の敷地内に事務所と店舗を兼ねた花火のギャラリーも開設した。
「夏休みの終わりとか年に何回か、地元の店も参加するイベントを行っています。子どもたちに花火の体験をしてもらうのが大きな目的です。都市部では最近、花火をすると近所から煙が迷惑だとかうるさいなどの理由でクレームがついたりします。子どもの頃に花火を体験していないと、大人になってから花火を懐かしく感じる気持ちが育ちません。ギャラリーでは線香花火以外にも数十種類の花火をバラで売っています。自分の好きな花火を一つひとつ選んで買う楽しさも子どもたちに知って欲しいのです」
ギャラリー開設の目的を、筒井さんはそう説明する。
最近はさまざまなワークショップに招かれる機会も増えている。この8月には東京・渋谷で開かれる大手小売店主催のワークショップに参加する予定だ。
子どもたちの輪の中で、線香花火の花が咲き、笑顔の花が咲く。
そんな平和で美しい光景が、これからもずっと日本の夏の風物詩であって欲しいものである。
つつい・りょうた 1973年、福岡県生まれ。祖父の筒井時正さんは、ねずみ花火の考案者。筒井時正玩具花火製造所の3代目に生まれ、子どもの頃は火薬をおもちゃ代わりにして遊んだ。高校卒業後、自動車関連の会社で3年間働いた後、家業を継いだ。剣道4段。最近は、チタニウム、アルミニウムなどを火薬に配合した「金属花火シリーズ」 も開発した。
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