伝説のテクノロジー
新しいアートの世界を切り拓く200%ポジティブ体質の書道家
書道家 武田双雲さん
脱サラで始めた書道教室
母親の武田双葉さんが書道家だったため、武田さんは幼い頃から書道に親しんでいた。だが、大学卒業後、NTTに勤めていた時代には、しばらく書道から離れていた。筆を握ることがなくなり、キーボードで字を書く日々が続いたのだった。
ところが正月の休みに久しぶりに帰省したとき、襖書きになっていた双葉さんの書を見て、全身に鳥肌が立つほどの感動を覚えた。子どもの頃から毎日のように見ていた双葉さんの書になぜ、そのとき突然感動したのか、武田さん自身もよく分からないという。ただ、書道から離れていたため、潜在意識の中に埋もれていた書への欲求が逆に高まっていたのかもしれない。
ともあれ、これを契機に武田さんは再び書に向き合うようになる。しかもそれまで以上に書道が好きになったという。字を書くことが好きで、楽しくて仕方なくなってしまったのである。そして武田さんは周囲が引き留めるのを振り切るようにしてNTTを辞め、湘南で書道教室を始めた。
だが生徒はなかなか集まらず、決して順調なスタートとはいかなかった。そんなある日、武田さんは横浜に行ったとき、路上でサックスを演奏している人に出会った。そして激しく感動した武田さんはそのサックスプレイヤーにセッションを申し込んだ。といっても、数メートル離れたところで字を書くだけのことだが、路上で書道のパフォーマンスをする“ストリート書道”や異分野のさまざまなアーティストとコラボレーションするなどの独特の創作活動の原型が、ここから始まったのである。
「サックスの演奏を聞いて感動したように、自分の書く字で人を楽しませたり感動させたりしたいと思ったのです」