ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

楽観性がなければ冒険も挑戦もできない

魚崎浩平

基礎は載せる物あってこそ

 最近は、基礎研究をしている研究者に応用展開や実用的成果を求めすぎると指摘する人もいます。素粒子や天体の研究などは真理の探求が目的で、応用展開を考える必要はないと思いますが、電気化学などの場合は、基礎研究の上に何かが積み上がっていかなければならないのではないでしょうか。

 家づくりを例にすれば、基礎をつくり、その上に家ができて、初めて完成となります。基礎の上に家が載るからこそ、基礎なのです。基礎工事だけで終わったら、基礎とはいえないでしょう。実用的な成果を求めすぎるといいますが、高度な基礎研究こそが大きな応用研究の源泉となるものと思います。

 そうした反省もあり、北大を退職後は、物質・材料研究機構で再生可能エネルギーに関わる研究を行うとともに、科学技術振興機構の支援で実施された次世代蓄電池実現を目指すALCA-SPRINGプロジェクトの運営総括を10年間担当し、さらに現在は対象をより拡大した「革新的GX技術創出事業」(GteX)のプログラムディレクターを務めています。

 日本の科学技術の相対的な地位が低下しているのは確かです。ただ、単純に論文数や引用数を比較することにはあまり意味がないと考えています。問題なのは、日本の研究者の国際的な存在感が下がっていることです。世界をリードする研究をすることはもちろんですが、名前や存在が知られていなければ、論文は読まれませんし引用もされません。こうした状況に鑑み、GteXでは海外連携を重視し、日本の若手研究者の国際的活躍を支援する枠組みをつくりつつあります。

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