次代への羅針盤
新たなパラダイムを構築し、真理を実証して時代に問う
難波成任
強靭な人格を養う
こういうと、厳しい環境に置かれている今の若い研究者は、「10年、20年先を夢見ることなどできるのか?」と反論されるかもしれません。しかし私は今の若者が特に厳しい環境にあるとは思っていません。私たちの時代には若者人口が今の2倍ありました。競争は激烈で、大学紛争もあり、今よりはるかに多くの人たちが途中で挫折していきました。
今どきの若者は無気力だ――。私たちも同時代の大人からそう言われていたことなど、今の若い人たちには想像もつかないのではないでしょうか。
人間は意識し行動する高等生物ですから、何かうまくいかないことがあると、「自分はこの程度の能力しかない人間だ」と思いがちです。しかし実はそう考えることこそが自分を萎縮させ、気づかぬうちに幾度も訪れているチャンスをみすみす見逃してしまうことになるのです。一生のうちの運不運は平均すればたいていの人が大差ないと思っています。訪れたチャンスを捕まえるには、へこたれないという能力が必要です。若いうちにそうした強靭な人格を養っておくことも、とても大切です。