次代への羅針盤
新たなパラダイムを構築し、真理を実証して時代に問う
難波成任
失敗と挫折は多いほうがいい
社会を変えるには、制度改革というトップダウンの発想と、社会人のリテラシー向上というボトムアップの発想の両方が必要です。そのため私は植物病理学研究室に教授として迎えられたらすぐ植物医科学研究室の設置、植物医師の養成プログラム構築と展開、東大植物病院の開設などを実現するとともに、社会人の植物医師認定制度創設などを実行しました。
その後、私はファイトプラズマや植物ウイルスの全ゲノム解読、病原性遺伝子・抵抗性遺伝子・宿主特異性決定機構の解明などに、世界に先駆けて成功してきました。そうした経験を踏まえたうえで、最大限の成果をあげるコツを言えば(もちろんそれは人それぞれですが)、次の4点に整理できると思います。
⒈良い課題設定
⒉高い目標と俯瞰的視点
⒊自由で伸びやかに豊かな発想を育むときと、軍隊式にバリバリやるときのスイッチの自在な切り替え
⒋失敗と挫折を若いうちに経験しておくこと
⒌皮相的な現象にとらわれると本質を見落とす
アルバート・アインシュタインは「常識とは18歳までに身に付けた偏見のコレクションである」と言いました。私たちは若いころの受験勉強で身に付けた常識にとらわれています。知の殿堂である大学でその殻を脱ぎ捨てられなかったとしたら、皮肉なことではないでしょうか