ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

自分の可能性を狭めてはいけない

今年、日本化学会史上初の女性会長に就任した川合眞紀氏。
分子科学研究所所長も務めながら日本のアカデミアの在り方を見渡し、「このままではこの国は壊れる」と警鐘を鳴らす。

Maki Kawai

川合眞紀

分子科学研究所所長 日本化学会会長

女性研究者が少ない理由

 日本化学会の前身の化学会は1878(明治11)年に結成され、今年は創立140年にあたります。その140年の長き歴史の中で、女性が会長になったのは私が初めてのことです。2008年に日本化学会賞をいただいたときもどなたかが調べてくださって、女性の受賞者は私が初めてだったことが分かりました。

 学術の世界の化学の分野では、性差はあまり関係ありません。ただ、諸外国に比べ日本の化学会は女性の比率が低いのが実情です。国によっても違いますがラテン系は総じて女性が多いようです。OECD(経済協力開発機構)加盟国では日本と韓国が最下位争いをしていましたが、最近韓国では女性教授がすごく増えています。いずれ日本だけがとり残されてしまうのではないでしょうか。

 女性が少ないことには文化的な背景があると思います。理系学部の中でも医学、薬学系は女性が多いことにそれが表れています。結婚しても何かあったとき稼ぐことができないといけないので、手に職をつけておこうという考えがぬけていないのでしょう。そこには、そもそも女性は家庭に入ったら仕事をしないという考え方があります。そういう文化がいまだに色濃く残っているような気がします。

 女性が少ないことについて、女性差別があると指摘する人もいます。しかし、私自身に関して言えば、研究者として生きてきた中で女性だから不利だと感じた経験はありません。むしろ得したような気もします。女性研究者が少ないので、ちょっと気の利いた仕事をするとすぐ名前を覚えてもらえたものです。

次のページ: 大きく広がった分子科学

1 2 3 4 5