ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

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化学を、楽しみましょう

中條善樹

研究はエンドレス

 自分のやりたいことができるのは楽しいものです。しかし、その先に自分が思ってもいなかったすごいことが出てきたら、もっと楽しくなります。学生には山登りにたとえて言うことがあります。山登りは苦しくきついものですが、山頂にたどり着いたときの爽快感、達成感はすごいものです。それは研究も同じです。しかし、本当の研究は実は少し違うのです。麓にいるときにいろいろ調べ、一番高い山を目指します。ところが8合目あたりまで登ったとき、初めてその向こう側にもっと高い山が見える。そうしたら今度はそちらの山の山頂を目指す。それが本当の研究というものです。

 私は研究生活を楽しめました。だから悔いはありません。けれども、やり切ったかと言ったら、全然そんなことはありません。研究すればするほど、次にやりたい新しいことが出てくるからです。いい結果が出たときほどそうです。だからある意味、研究はエンドレスなのです。

 自分の専門がハイブリッド材料だから言うわけではありませんが、今はもう、有機だ無機だと言う時代ではないのではないでしょうか。有機と無機両方のいいとこ取りをする時代です。別の言い方をすれば有機でもあり無機でもある。同時に有機でもなく無機でもない。

 実は多くの材料はすでにハイブリッド化されています。プラスチックは有機材料だと思っている人がいるかもしれませんが、無機のフィラーが必ず入っています。複合化されているのが当たり前で、混ざるレベルもナノレベル、分子レベルとどんどん細かくなっています。最近、私たちが提唱している元素ブロックというのは、元素レベルで有機、無機を混ぜるという発想です。元素レベルで有機と無機を混ぜ合わせたら新しいものができるのは間違いありません。うまくやれば1+1が3にも5にもなるかもしれません。それが混ぜ物の面白いところです。もし1+1が100になったら、それは0から1を生み出すのと同じくらいの価値があるでしょう。

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