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次代への羅針盤

次代への羅針盤

たとえ基礎的な研究でも出口を見据えた構想力を

時任静士

若いときこそ海外体験を

 企業の研究者は、かつてのような長期的な研究ができなくなってきています。マネジメント層が短期的なものの見方をして、2~3年で出口が見えてこないと、「いつになったら事業化できるのか」とせっついてくるからです。

 一方で今、地方の大学では研究費が減り続けています。実績の少ない若い研究者には、なかなか予算が回りません。パーマネントのポストもどんどん減っています。たいてい3年から5年に任期が限られている。3年の任期ですと、2年研究したらもう次の職を探さないといけません。それで腰を据えた研究ができるでしょうか。

 だから日本にこだわらず海外に出ることも考えたほうがいいでしょう。私も博士研究員として1年数カ月、海外で仕事をした経験がありますが、若いうちはできる限り海外体験をするべきです。私の研究室に、海外には行きたくないという学生がいました。ところが彼に韓国から来た留学生の指導を任せたら、半年後には「海外に行きたい」というようになりました。留学生に刺激されたのでしょう。

 企業も大学も、今は確かに厳しい状況です。それでもどうしても手掛けたいテーマがあるのなら、構想力とビジョンを鍛え、広い視野を持ち、基礎的な研究であっても出口が見通せるような提案をして、上を説得する。若い方たちは、それくらいの覚悟で道を切り開いていって欲しいと思います。

どうしても取り組みたいテーマがあるのなら、出口を示して上を説得しなさい。

時任静士[ときとう・しずお] 山形大学 有機エレクトロニクス研究センター センター長 卓越研究教授 1958年生まれ。工学博士。東京農工大学工学部電子工学科卒。九州大学大学院総合理工学研究科博士課程修了。同大学院助手、カリフォルニア大学サンタバーバラ校博士研究員、豊田中央研究所主任研究員、日本放送協会(NHK)放送技術研究所研究部長を経て、2010年4月、山形大学大学院理工学研究科卓越研究教授に。2015年4月から現職。「自分がアクティブでいられる時間は限られている。だからいろいろチャレンジしたい」と語る。「東京にいたときは通勤ラッシュで毎日大変でしたが、今は通勤も車で8分、渋滞もなく、生活のストレスがありません」と笑う。

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