次代への羅針盤
たとえ基礎的な研究でも出口を見据えた構想力を
時任静士
基礎から応用まで幅広くカバー
山形大学は、結城章夫前学長の時代に、地方の国立大学は何か特徴がなければ生き残れないとして、有機エレクトロニクス研究による一点突破の方針を打ち出しました。有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)、有機太陽電池、有機トランジスタを3本柱に、世界最高水準の研究拠点にしようという構想です。
私がセンター長を務める有機エレクトロニクス研究センターは、これら有機エレクトロニクスに関わる材料からデバイスの基礎的な研究から応用までカバーしています。有機エレクトロニクスに特化して基礎から応用まで幅広く研究開発しているこの規模の研究センターは、おそらく海外にもないと思います。
近年、基礎的な研究だけでは研究資金が集まりにくくなってきています。しかし基礎研究も、出口を見据えた提案をすると、資金も企業も集まりやすくなります。そこから産学連携が実現すれば、出口を見据えた研究がさらに加速されます。大学の先生には、論文が書ければいいという方もたくさんおられます。しかし私たちは、論文だけでなく産学連携で実用化まで目指すということを基本的なスタンスとしています。
私自身は、豊田中央研究所にいたときは車の中の有機EL、NHK放送技術研究所にいたときはフレキシブル有機ELの研究をしていました。出口は違いましたがいずれも有機ELがテーマでした。しかし山形大学に来てからは、有機EL研究の第一人者の城戸淳二先生がおられるので、私は有機トランジスタを主要なテーマにし、そこからプリンテッド・エレクトロニクスにも展開し、今はバイオセンサーの研究もしています。研究テーマが少しずつ変わってきたわけです。