貢献する精留技術
プラスチックや化学繊維といった化学製品は、さまざまな場面で私たちのくらしを支えています。これらの主原料である石油は限りある資源であり、将来枯渇することが予測されるため、持続可能な社会の実現に向けて、再生可能な資源を原料とした化学製品への転換ニーズが世界的に高まっています。
このような中、当社は、再生可能資源である「松」から得られる有用物質を使って、化学素材をつくるパインケミカル事業を中心に発展してきました。松材から紙の原料となるパルプを製造する過程で副生する粗トール油を独自の技術で「精留」し、当社製品の粗原料となるトールロジン、トール油脂肪酸などをつくります。これらの素材は生活に欠かせない製品に姿を変え、人々のくらしに役立っています。
精留は、物質の沸点の違いを利用して分離する「蒸留」を何段階も行うことで、より高い精度で物質を分離し、高い純度の物質を得ることができます。このようなメカニズムにいち早く着目し、1958年、国内で初めてトール油精留プラントを立ち上げた当社が、長年培った技術力で製造する高品質なトールロジンやトール油脂肪酸は、さまざまな生活シーンで活躍しています。
当社のロジンは、例えばゴムの製造(乳化重合法)に不可欠な乳化剤に使われ、さらにはそのゴムでタイヤをつくった場合、タイヤの強度向上効果もあるため、国内を走る車のタイヤの半分以上に使われています。また、ロジン系サイズ剤は、植物由来という安全面での評価も高く、食品包装紙に耐水性を付与する間接食品添加物として普及しています。
トール油脂肪酸は、そのままインキや塗料用樹脂の原料として使用されますが、ダイマー酸など多量体化したものを樹脂の合成に用いることで、耐水性・強度・柔軟性を向上させる機能があり、船舶や屋根用塗料、橋脚補強の接着剤などに使用されています。
当社は、「松」を原料とした事業を展開してきました。今後も、パインケミカル事業をさらに深掘りし、新たな用途開発・事業領域拡大を加速させ、SDGsなどの社会的課題の解決に役立つサステナブルな製品の開発・製造・拡販を通じて、カーボンニュートラルな社会の実現と人々の豊かなくらしに貢献し続けます。