陰で支える
近年、よく耳にする「半導体」は、自動車や家電製品、パソコンやスマートフォンなどの情報通信機器に使われており、私たちの生活に欠かせない材料です。半導体とは、電気を通す導体と通さない絶縁体の中間の性質を持つ物質で、電流を制御する機能を持っています。半導体技術は日々進歩しており、自動車の自動運転化技術に使用されている光半導体もその一つです。自動運転化における運転支援システムには「カメラ」や「ミリ波(電波)レーダー」とともに「光レーダー」を用いたリモートセンシング技術が必要であり、光レーダーの心臓部に光半導体が使用されています。
光レーダーを用いたリモートセンシング技術の原理はシンプルで、対象物にレーザー光を当て、その光が跳ね返るまでの時間から、対象物までの距離やその性質、形状を測定します。レーザー光は電波よりも波長が短く、誤差が発生しにくいという特徴があり、遠距離の小さな対象物をも正確に測定できるのです。そして、その主役が光半導体で、光を受光する受光素子にハリマの技術が使われています。半導体の製造工程では、チップの損傷や腐食を避けるためにセラミックや樹脂などの保護剤でパッケージするのが一般的です。そして光半導体の場合は、保護剤に透明性の高いシリコーン樹脂が使われます。しかし、シリコーン樹脂は非常に軟らかいため、キズが付きやすく、キズが付くと受光感度が落ちるという課題があります。その課題を解決するため、当社ではパッケージ工程と同時にシリコーン樹脂表面にキズ防止膜を形成させる技術を開発しました。パッケージ工程は、金型にシリコーン樹脂を入れ、それを圧縮して固めますが、できあがったものを型から剥がすために、金型とシリコーン樹脂の間に「離型フィルム」が用いられます。当社はこのプロセスに着目し、シリコーン樹脂と接する離型フィルム側にキズ防止膜を塗工形成し、圧縮の過程でシリコーン樹脂側にキズ防止膜を転写させる技術を開発しました。これにより従来の製造方法を一切変えることなく、できあがったパッケージに「キズ防止性」を付与することができました。
今後ますます進んでいく半導体の発展に、ハリマの技術で貢献していきます。