One Hour Interview
生命科学への貢献を夢に、蛍光特性変化を起こす分子を研究
相良剛光
ピコニュートンオーダーの力を可視化したい
その力というのはどれくらいの強さのものなのでしょうか。
ピコニュートンオーダーです。1ピコニュートンは1兆分の1ニュートンですから、非常に微細な力ということになります。両手にリンゴを1個ずつ持ったときにも、その間には引力がピコニュートンオーダーで働いています。当然、人間が知覚できるレベルではありません。人体を構成している細胞の中には、膜貫通たんぱく質があります。このたんぱく質が1分子レベルで出す力もピコニュートンオーダーで、その力を見たいと考えています。
どういう方法で測定するのでしょうか。
今は原子間力顕微鏡を使っていますが、なかなかきれいなデータが得られていません。もっと別の新しいツールを使う必要があるかもしれません。
そうした極小の力を測ろうとすると、環境が重要になりそうですね。
エアコンの空気の動きでも影響が出てしまうくらいで、振動があったら計測不能になってしまいます。そのため除振台を用意し、その上に防音ボックスを設置して測定装置などをその中に入れます。それでも建物のほかの部屋にある機械などが動いていると、その振動を拾ってしまうことがあります。ですから、ほかの研究室に誰もいない土日に測定すると割ときれいなデータが取れますね。
この研究が成功したら最終的にどのような成果が得られるのでしょうか。また、どのような形で社会実装されるのですか。
例えば、材料が受ける微細なダメージを正確に評価できるようになりますから、ゴムなどの材料の劣化の分析に役立つと思います。しかし私が一番メインに考えているのは、生体応用の分野です。まだお話しできないのですが、生命科学の基礎研究に応用できるものの可能性を本気で考えています。