ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

生命科学への貢献を
夢に、蛍光特性変化を
起こす分子を研究

相良剛光さんは、修士学生のときに機械的刺激で蛍光色の変わる分子を発見。
これを契機に、この分野一筋で研究に取り組んでいる。
将来に見据えているのは、生命科学への貢献だ。

相良剛光

東京工業大学
物質理工学院材料系 准教授

偶然の発見が導いた研究者への道

先生の研究内容について教えていただけますか。

 こすったり引っ張ったりして機械的刺激を与えると蛍光特性が変化する有機材料を開発しています。元になる発見をしたのは2006年で、まだ東大の修士課程にいたときのことです。偶然、ある化合物をこすったら色が変化する現象を見つけました。最初は分子が壊れたのかと思いましたが、どうもそうではありません。しかも、こすった後に熱をかけると蛍光色が元に戻ったのです。

熱で戻せるということは、分子の結合が切れていないということでしょうか。

 そうですね。だからこすったときの圧力で色が変わるのではないかと考え、そういう現象を示す化合物があるのか調べてみたのですが、海外でもほとんど報告がありませんでした。あのときのワクワク感は忘れられません。これが私の研究者人生の始まりです。それからは、この研究一筋。修士課程の終わり頃からは、先生から指示されたテーマはほとんど研究せずに自分の興味の赴くままに研究をしていました(苦笑)。理解のある先生ばかりで、運がよかったと思っています。

有機合成反応が進行しているかの確認

どうしてそれほどこの研究にのめり込んだのでしょうか。

 新しい未知のテーマで、大きな可能性があったからです。すでに研究室にあったテーマは先輩たちが取り組んでいましたし、それなら未知のテーマに取り組んだほうが面白いだろうと。そして、もしこういう化合物が開発できれば、力をセンシングする材料に応用できると考えました。もちろん、力をセンシングできる材料は世の中にゴマンとあります。スマホのディスプレイなどにも、圧力をセンシングする材料が使われていますね。でも、そうしたものと競合しても仕方ありません。この研究が本当に役立つのは、おそらく生体応用だろうと考えています。ポスドクのときに東大の薬学部の研究室に行き、腫瘍細胞の識別などに使われる蛍光プローブについての知見を得たのもそれが理由です。

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