One Hour Interview
独自の手法で創薬資源を開拓
菊地晴久
使い尽くされたという壁を打破
それはどのような生物なのでしょうか。
土の中にいる単細胞生物で、小さいため普段は目につきません。培養すると1mmくらいの毛のようなものが生えてきます。単細胞生物ですが、食べるものがなくなって飢餓状態になると100万個くらいの単細胞が一斉に集まって多細胞生物になるんです。そうなると目に見えるくらいの大きさの子実体を形成します。そして、またバラバラの単細胞生物になる。そういうことを繰り返す変わった生物です。細胞性粘菌そのものは以前からその存在を知られていましたが、カビとか細菌のように化合物をつくっているかという研究はほぼされてきませんでした。天然物化学の業界ではまさに未利用生物だったのです。私はこの生物を十数年前から研究していて、放線菌やカビがつくる化合物とは構造がまったく異なる化合物を創り出していることがわかりました。その中に創薬資源になりそうなものがあることも見出しています。そういう未利用生物を活用すれば、「もう使い尽くされた」と言われ有機溶媒で抽出した後の液を濃縮する。細胞性粘菌る壁を打破できるかもしれません。
未利用生物としてはほかにどのような生物があるのでしょうか。
これから研究してみようと考えているのは、卵菌とペラゴ藻です。私は生物の分類にそれほど詳しくありませんが、卵菌とかペラゴ藻はカビの仲間と藻類の間にいる生物のようです。卵菌という名前が付いていますが実は菌ではなく、見た目はカビのようですが、カビとも全然違う生物です。ペラゴ藻はまだまったく手を出していませんが、藻のように見えて、むしろカビに近い生物のようです。こうしてみると、まだ活用されていない生物はたくさんいるだろうと考えています。