ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

伝統材料の紙に新たな命を吹き込む温故知新融合研究

古賀大尚

理論値に迫る容量を実現

パルプ繊維だと、容量はどれくらい出ているのですか。

 スーパーキャパシタ用電極として評価した場合、ベストレコードで200F/gくらいです。現状では、平均値だと、150F/gくらいでしょうか。現在使われている活性炭の電極は容量が30~40F/gくらいといわれていますので、約5倍長持ちする電極ができているということになります。もちろんラボレベルのことですが、高いポテンシャルといえます。

より容量を向上させるには、どのようなことが必要になりますか。

 表面積と浸透性を両立させるところでいろいろ条件を振ることが必要になると考えています。電極材料には今、還元型酸化グラフェンを使っていますが、その他のナノカーボン等、材料自体の最適化をすることも大事です。グラフェン電極の容量は理論値が550F/gといわれています。現状では、コンスタントに300F/gくらいいけば世界でも最先端レベルと胸を張れると思います。ただ、ここまではトントン拍子だったのですが、そこから先はなかなか上がっていないのが現状です。

光照射技術による還元型酸化グラフェンペーパー電極の創製という研究もされているとお聞きしました。

 これはまだ詳しくお話しできないのですが、グラフェンは、比表面積が一番高いカーボンナノ材料ですが、高価なうえに、凝集しやすくて理論値どおりの成果が出ないという問題があります。それに対してグラファイト(鉛筆の芯)から得られる酸化グラフェンは、非常に価格の安いグラフェン材料として注目されています。ただ酸化グラフェンを電極利用するには還元処理が不可欠なのですが、それをするとグラファイトに戻って表面積が下がるというジレンマがありました。その問題を私は、紙抄き技術と光照射還元技術を併用する異分野融合戦略で解決を試みています。

次のページ: 研究が楽しくて仕方がない

1 2 3 4 5