ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

伝統材料の紙に新たな命を吹き込む温故知新融合研究

古賀大尚

パルプ繊維の方がいい結果に

紙を使う難しさはありませんか。

 紙は伝統的な材料なので、電子デバイスなどの新しい分野では使えないと考えられがちです。ところがあらためて立ち返ってみると、紙の技術が使えるところがいろいろある。そこがこの研究の面白さでもあります。しかも、ラボレベルではありますが、かなり性能のいいものができているのです。細かいところで難しいことも多少はありますが、ここまでは予想以上に順調に来ています。

 紙というと最近は、セルロースナノファイバーが注目されています。実は私もこの研究で最初はセルロースナノファイバーを使ってみました。ところが意外にいい結果が得られませんでした。そこで従来のパルプ繊維に切り替えたら、予想以上にいい結果が出たのです。

ナノファイバーでいい結果が出なかったのはどうしてですか。

 細いセルロースナノファイバーでつくった紙だと孔のサイズが小さすぎて、電解液が浸透しにくいため、容量を大きくできないのかもしれません。パルプでつくる紙だと孔のサイズが1,000倍くらい大きいため、電解液が浸透しやすく、容量的には10倍くらい違う結果も出ています。紙の構造が容量を決定しているわけです。もちろん、セルロースナノファイバーでも改良を加えればさらによい結果が出せる可能性も十分にあると思います。材料は変えず、繊維の太さとか構造を変えて容量を増やしていくという紙中心の発想で、新しい研究テーマを開拓したいと考えています。

構造を変えることは難しくないのですか。

人差し指の上に載せた紙の蓄電デバイス(蓄電紙)試作品第1号。

 そこがまた紙の面白いところで、簡単にできるのです。セルロースの細いファイバーがたくさん束なってひとつのパルプ繊維になっている。セルロースナノファイバーは、それを解きほぐして1本1本取り出しているイメージです。その過程で1本1本にせずに、たとえば5本の状態にするとか、そうするといろいろなサイズの繊維が得られます。太いものを使うと孔も大きく、細いものを使えば孔も小さくなる。また、繊維を紙にする工程で工夫を加える手もあります。色々な戦略で孔のコントロールが自在にできます。

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