ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

新しい連結様式で拡張型ポリアニリン誘導体を精密合成

道信剛志

あえてニッチなところを開拓

先生は1と8を連結させた高分子もつくられたそうですね。

 ポリ(1,8-カルバゾール)のことですね。これは連結させること自体はそれほど難しくないのですが、誰もつくったことがないものだったので、ニッチなところを開拓しようと考えたのです。この材料の特徴は、溶液中でも固体状態で凝集したときでも特性が変わらないところにあります。溶液中でも固体でも物性が変わらずに安定しているのです。

 また、このポリ(1,8-カルバゾール)は、共重合する化学構造を変えると、青色から緑色、赤色と、すべての基本となる発光色をつくりだすことができます。したがって適度な成分比で混ぜ合わせると、白色発光の材料をつくることもできます。ただ、溶液中ではRGB(赤・緑・青)をおおむね同じ比率で混ぜればいいのですが、固体だと青色をかなり多く入れないと白色になりません。そこはうまく調節してやる必要がありますが、白色発光する固体薄膜もつくれるということを証明したのはひとつの成果だと考えています。

松籟財団の助成を受けているのはどういう研究ですか。

 最初に扱っていたポリアニリンに立ち返り、それをカルバゾールでつくってみようというコンセプトの研究です。ポリアニリンは連結されたベンゼン環の間に窒素原子(N)が入っている形です。これをカルバゾールの高分子でつくろうとすると、ポリ(3,9-カルバゾール)という新しいポリアニリン誘導体になります。これはクロスカップリングの反応を使って確実につくることができます。これからはこの高分子の半導体特性や、固体状態でも安定に青色の発光を保てるかということなどを調べていき、発光素子、太陽電池、メモリーなどに応用していくことがテーマになります。

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