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伝説のテクノロジー
松を食材に、おいしく健康にいい料理をつくる
海岸の防風林用や庭木として、松は私たちに身近な木だ。
その松は、松葉や松ぼっくり、はては花粉も料理の素材になるという。
村松さん夫妻が開く松フード試食会を通じて、今、松料理が広がりつつある。
松料理家・村松一男さん、美穂さん
松尽くし「松のフルコース」
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松の実は、酒のつまみとしておなじみだ。しかし、松の葉や松ぼっくり、花粉まで料理に使うことができるというのは驚きだ。
松のフルコースともいえる料理を用意してくれたのは、村松一男さんと美穂さん。今、全国で松フード試食会を開いて、注目されている夫妻だ。炊き込みご飯、みそ汁、ハンバーグ、コロッケ、キッシュ、パスタ、炒め物、サラダ、そしてデザートのケーキやヨーグルトに至るまで、すべてのメニューに松が使われている。
松料理と聞くと、えぐみがあるとか、青臭いのでは、と思うかもしれない。しかし、村松さんたちがつくる料理にはそのようなことはない。ミキサーを使い松葉と水を撹拌し濾した松葉ジュースも、驚くほどさっぱりしている。
「松料理といっても、松の味が出るのではなく、むしろ松が食材の味を引き出すのです。でも僕も最初は、松を料理に使うということが信じられませんでした」(一男さん)
きっかけは今から5〜6年前、美穂さんが調べ物をしていて「松ぼっくりのジャム」を知ったことだった。ロシアでは日常的に食され店でも売っていることを知った。あんな硬いものがどのようにしてジャムになるのか?さらに調べるうちに、松ぼっくりの効能も素晴らしいが、松のすべてがすごいのではないかと気がついた。
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松葉料理のフルコース。生の松葉でつくった松葉ジュースをはじめ、松の葉と松の実のジェノベーゼ風パスタなど、松尽くし料理の数々が並ぶ。これらはすべて肉や魚、卵、乳製品を使わないヴィーガン料理で、ハンバーグも肉ではなく大豆ミートを使っている
「松ぼっくりのジャムといっても、もちろん茶色のカサカサした大きな松ぼっくりではありません。まだ若い、緑色の小さな松ぼっくりを使います。ロシアではこれが風邪に効くともいわれているようです」(一男さん)
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緑色の小さな松ぼっくりを煮た松ぼっくりのジャム。松ぼっくりを口に含むと、イガイガ感はまったくなく、柔らかく優しい食感で、ほっこりした味わい
調べれば調べるほど、松のすごさがわかった。松の葉にはビタミンCや24種のアミノ酸、松ぼっくりや松の花粉には抗酸化作用のあるリグノイドなどが豊富に含まれている。松やにには浄血作用があり、中国では古くからその効能効果が広く知られている。松は世界各国で薬や食品などに広く利用され、しかもその効能には学術論文や臨床データなどのエビデンスがしっかりある。そして日本でも松葉茶などは各地にあるが、なぜか松を食べるという習慣はほとんどないこともわかった。
「根っこから花粉まで、松のあらゆる部分が料理に使えます」
一男さんはそう断言する。