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伝説のテクノロジー

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和弓矢製造

矢師・小山泰平(たいへい)さん

道具も自分たちでつくる

 小山矢の創業は1870(明治3)年、小山嘉六さんが静岡県の三ケ日で竹矢づくりを始めたことに端を発する。戦時中は一時、矢づくりから離れていたこともあったが、この間150年以上にわたり、矢の専業メーカーとしての歴史を重ねてきた。小山矢のつくる竹矢は、有名な神社の神事などで使われることもある。

 工程を細かく分けると70にも及ぶといわれる竹矢の製造は、竹の切り出し作業から始まる。竹矢に使用されるのは矢竹(やだけ)と呼ばれるタケ亜科の植物だ。矢竹は節の部分がそれほど太くなく、肉厚なのが特徴で、これは矢の棒状部分にあたる「箆(の)」に適している。ただし選別が重要で、矢にするのは3年目の矢竹がちょうどいいといわれる。2年目ではまだ若くて柔らかく、4年目では硬すぎるのだという。また夏に刈り取ると水分が多すぎるため、秋頃に刈り取った矢竹が理想だ。

 矢の製造には1年はかかる。小山矢では外部の専門業者から矢竹を仕入れ、天日干しする。そうすると緑色が抜けて白くなる。その後、太さや節と節の距離、重さなどでグループ分けを行い、虫がつかないように消毒してから半年間寝かせる。そうしてようやく箆づくりの作業に入る。

釜で熱した竹を矯め木を使い、手前から先へと竹の曲がりを矯正する。

 箆づくりでまず行うのは荒矯(あらだ)めしだ。竹はまっすぐなイメージがあるが、実は意外に曲がっているものが多い。それをまっすぐにする。両端に穴のあいた釜で火を焚き、穴に数回竹を通し、矯め木(ためぎ)と呼ばれる道具を使って矯正するのである。

 「竹矢づくりに使う道具は汎用性がないために、どこにも売っていません。だから釜や矯め木など、ほとんどの道具は自分たちでつくります。親父たちは以前、竹矢づくりを機械化しようと考え、ベルトコンベアまで自分たちでつくっていました」

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