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伝説のテクノロジー

一本一本の矢に魂を込めて

弓道で使う矢を丹念につくる「矢師」。
創業150年の歴史を誇る小山矢7代目当主の小山泰平さんは、
全国でも数少なくなった矢師の一人として活躍している。

矢師・小山泰平(たいへい)さん

射手の体格・力量に合わせて

 弓道で使う矢の素材は大きく2つに分けられる。一つは竹、もう一つはアルミやカーボン、グラスファイバーなどのいわゆる新素材だ。現在、全日本弓道連盟に登録している会員は約13万5,000人いるが、その多くが新素材の矢を使っている。アルミにしろカーボンにしろ、工業製品なので品質が均一で安定し、価格も安い。アルミ製の矢は竹矢に比べ、5分の1程度の価格で購入できる。そのため高校や中学の弓道部に所属する学生の大半は、アルミなど新素材の矢を使っているという。

 かつては竹矢しかない時代が長く続いた。アルミの矢が登場したのは1960年代以降のことだ。竹矢に比べて価格の安いアルミ矢が登場したことで、弓道人口は急増したといわれる。その弓道人口の急増に竹矢の生産が追いつかず、ますますアルミなど新素材の矢が増えていったのだった。

 それでも竹矢にこだわる選手は一定数いて、特に高段者には「竹矢でなければだめだ」という人も多い。竹矢を使うことを出場要件にしている弓道大会もあるそうだ。

 「竹矢は丈夫で軽いのが特徴です。さらにオーダーメイド仕様が可能なので、その人の体格や力量に適したものがつくれます」。小山矢の社長、小山泰平さんがいう。

 競技としての弓道には、矢の長さや重さについての規定がない。したがって腕の長さや引く力、技量に応じて自分に最も適した矢を選ぶことがとても重要になる。

 だが、今、その竹矢をつくることのできる矢師は減少しており、極めて少ないのが実情だ。泰平さんによれば「全国で10人いるかどうか。現役の矢師として実際につくっている人はもっと少ないかもしれない」とのことだ。

 しかし、小山矢にはその貴重な矢師が3人もいる。泰平さんと父親の三郎さん、そして伯父の金一さんだ。

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